学校へ通っていた頃はどなたでも母校の校歌を耳にし、歌う機会があったのではないでしょうか。校歌と聞くと、主に所在地の地形や自然の特徴を盛り込みつつ、建学の精神をテーマとした歌詞にシンプルな曲というイメージをもたれる方が多いのではないでしょうか。
しかし、今や校歌に関するトレンドも変化しています。
今回は昭和から平成へ、20世紀から21世紀へ時代が移り変わるにつれて変容する校歌の流行について、ご紹介します。
明治・大正時代に作られた校歌の特徴
生徒が歌うには少々難しい言葉が多用されている
ご自身が通われた校歌を思い出してみてください。
小中学生に合わない歌詞や難しい言葉、堅苦しい言い回しが入っていたのではないでしょうか。
伝統ある学校などで明治や大正から昭和初期などの古い時代に作られた校歌の場合、当時は学びの中で一般的に用いられた表現であっても、後の時代では難解に感じる表現が用いられている場合も多かったことでしょう。
歌詞の傾向は「山や川、海などの自然と建学精神」
多くの方がイメージする校歌といえば、近くにある山や川の名前、あるいは自然などの風景を歌いつつ、その恵まれた環境の中で勉学や真理の追究に励みましょう、という歌詞の内容が多いのではないでしょうか。
昭和時代に作られた校歌の流行
昭和以前の明治や大正時代の校歌は、校訓や学校の教育理念などに基づいた歌詞が中心でした。昭和の時代になると以下のように校歌特有のいくつかの傾向がみられるようになります。
- 具体的な地名を歌詞に入れる
- 生徒の健康や健全な成長を前面に出した歌詞の内容が加わる
- 勉学の奨励のみならず、地域社会への貢献などを内容に混じえる
- メロディーは古典的な応援歌調から、童謡や唱歌のような節回しに
例えば、小学校の校歌であれば「明朗・元気」、中学校なら「友情・思いやり」、高校なら「青春・協調性」などに関する歌詞の内容が多用されている点が、昭和時代の校歌のトレンドといえそうです。
平成になってから校歌はどう変わったか
それでは、平成に入ってからはどのような校歌が多く作られているのでしょう。
生徒がよく知っている有名アーティストが校歌を作るケース
地元出身者や学校関係者にゆかりのある人物など、生徒たちも名前をよく知っている有名アーティストに校歌の制作依頼をするケースが増えました。
共感性の高い口語調の歌詞と、歌いやすくポップなメロディー
昭和までの校歌の歌詞は、文語調の難解な表現や身近に想像しにくい理想などを描いたものが一般的でした。 しかし、平成になると各世代が共感できる明解な歌詞、覚えやすく歌いやすいポップなメロディーを用いた校歌が多くなっています。
平成の校歌に上記の傾向が強まった背景には、生徒たちにもっと校歌に親しんでもらおうという意図があると考えられます。また、学校行事で校歌のメロディーにのせた独自の振り付けで歌いながら踊る「校歌ダンス」が一部の地域で浸透しているなど、学校生活により密着した校歌を作ろうという流れが反映されていることが考えられます。
古くからの歴史がある学校も、「もっと生徒たちに進んで歌ってもらえる校歌を」と、平成に入って校歌を新しく作り直すケースが増えています。
特に有名アーティストが作る校歌には、より生徒たちに誇りに思ってもらえる、親近感を持ってもらえるという点も意識されていると考えられるでしょう。
おわりに
今回は、昭和・平成それぞれの時代に生まれた校歌の特色や、近年の新しい校歌のトレンドについてご紹介しました。
新しい校歌は、より口ずさみやすい歌詞やポップな曲調のものが多くなりました。これはかつて「厳粛な式典」であった学校行事が、現代は「みんなで盛り上げるイベント」へと変遷している傾向があるといえるのではないでしょうか。
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