映像制作において、悩まされるものが「ナレーションのパート」といわれています。どのような映像にしたいのかは固まっていても、ナレーションまでは考えていなかったというケースは多いようです。しかし聴覚情報は視覚情報の次に印象に残りやすいため、ナレーションの印象によって映像テイストが大きく変わってきてしまうほど、映像制作においてナレーションは重要な要素です。
今回は、そんなナレーションの選定についてご紹介いたします。
声質で変わる印象
初めて映像制作される方は、最初の段階でナレーションは「男性が良いのか?女性が良いのか?」と悩んでしまうのではないでしょうか。
まず、男性のナレーションは声が低い方が多いため、信頼感や説得力を与えやすいといわれています。
一方、男性に比べると女性ナレーションの方がすっきりしていて聴きやすいという特徴があります。実際にカーナビの音声やコンピューター音声の多くは、女性の声を用いられていることからも明らかです。
米スタンフォード大学のクリフォード・ナス教授の研究では、「誰もが気にいる男性の声よりも、誰もが気にいる女性の声の方がはるかに見つけやすい」としており、女性の声の方が汎用(はんよう)性が高いことを示唆しています。
男女の声の質や高さの違いも大きく影響していますが、高い声は軽快で聴きやすい印象を、低い声は落ち着いた印象を与えることが可能です。高い声が女性、低い声が男性であることが多いため、声の高さの印象が、性別の声の印象に直結してきます。
また、年齢別で見ても声の高さによって印象は変わるでしょう。若い声と老いた声では、若い声はさわやかで軽快感のある印象、老いた声は男女問わず全体的に声が低いことが多いため、やはり落ち着いた印象を与えます。
ナレーションの選び方
気にいったナレーターの方と巡り会えても、制作した映像にマッチしていなければ、本来の意図とは違うものが完成してしまいます。では、どのようにナレーターの選定をすれば良いのでしょうか 。
ここでは、ナレーション選定で基準となる2点をご紹介します。
【1】ターゲットに合わせる
まずは、制作している映像がどのような人に向けて作っているものなのかという、「ターゲット」を確認してください。
例えば、株主総会向けでターゲットが投資家の場合と、新卒説明会向けでターゲットが学生の場合では、選定されるナレーションのイメージは全く違うものになります。
まず、投資家向けであれば、実績や今後の会社の展望を報告する場です。投資家にとって自分が所有する株式の価値がどうなるのかを確認する場でもあるため、軽快感やさわやかさよりも、信頼感や説得力が必要でしょう。そのため、男性・女性どちらの声でも問題ありませんが、低めで落ち着いた印象を与えるトーンが望ましいと考えられます。
一方新卒説明会の場合は、ターゲットが学生であることと、会社への期待感を高めてもらう場となるため、やわらかいトーンで、さわやかな声質が望ましく、この場合は女性の声の方がより適していると考えられます。
【2】映像のテイストに合わせる
2つ目は映像自体のテイストに合わせることです。
例えば、実写や商品紹介の映像の場合の多くは、映像を通して信頼を訴求します。そのため、信頼感や説得力を与えやすい、落ち着いた声を持った男性のナレーションに依頼することが多いでしょう。
一方、アニメーションを使った映像の場合は、そのテイストが実写に近いものなのか、ポップなテイストなのかによっても変わります。
実写に近いものならば、少し落ち着いたトーンでナレーションしてもらうことで、視聴者を映像に引き込みやすくなります。したがって、若い方よりも大人の深みを感じさせる声が合っているかもしれません。また、ポップなテイストの場合は、分かりやすく内容を伝えることを重視するため、クリアな印象の女性ナレーションを入れることが多いようです。
このように、誰に向けて発信する映像なのか、そしてその映像からどのような印象を与えたいかによって、ナレーションを選定することが重要となります。
おわりに
今回は映像制作におけるナレーションが与える印象と、選定の仕方についてご紹介しました。
映像の印象を大きく左右する非常に重要な役割であるナレーションを選定する際は、ターゲットと映像のテイストを決め、それに合わせて選定することが重要になります。
これから映像制作を検討される方は、ご紹介した内容を参考に、ナレーション選定について依頼する際は、制作業者に相談してみてはいかがでしょうか。